(インタビュー)プログラミングで「アイディアを形にする」力を – 東京大学・眞鍋美祈さん

インタビュー

プログラミングで「伝える」

Playgramの企画を手伝っていただいている東京大学の眞鍋美祈(まなべ・みのり)さん。
エンジニア・アーティスト・デザイナーとして活躍される眞鍋さんですが、
「私の作品で、プログラミングが使われていないものはない」と言います。

小学生の頃から電子工作などには触れていたものの、
実はプログラミングを本格的に始めたのは大学生からだとか。

プログラミングを普段どのように使っているのかや、
始めたきっかけをインタビューしてみました。


眞鍋美祈(まなべ・みのり)さん

エンジニア・アーティスト・デザイナーとして活動、ANA WonderFLY Creative Award(2018)、SICF20 ワコールスタディホール京都奨励賞(2019)、新世代賞特別賞(2019)、異能vationジェネレーションアワード(2019)など数々の賞を受賞。2020年にはワコールスタディホール京都で個展「ことばにさわる ー言葉が身体に還るとき、見えてくるもの。」を開くなど、学問の垣根を飛び越えて活動中。


― Playgramの企画を練る上で、眞鍋さんの豊かな発想にはいつもお世話になっています。改めて、本日はよろしくお願いします。

眞鍋さん:

よろしくお願いします。

― 早速ですが眞鍋さんは今、大学でどんなことをされているんですか?

眞鍋さん:

東京大学大学院学際情報学府学際情報学専攻先端表現情報学コース、稲見・檜山研究室に所属しています。

― 長い…(笑)

眞鍋さん:

名刺見ないとすらすら出てこないんですよね(笑)。

ここは同じ専攻の中にいろんなコースの人がいて、授業は理系のものも文系のものもありますが、私のコースではプログラミングを使った研究をしている人が多いですね。VR(仮想現実)とかAR(拡張現実)の開発、スマホアプリを使った研究、デジタル系のコミュニケーションデザインとか行動分析とかも。JSKという有名なロボットの研究室の人もいます。

― プログラミングの授業はあるんですか?

眞鍋さん:

大学院ではプログラミングで図を描画をする授業などがありました。でもプログラミングといわれてすぐにイメージするアルゴリズムを用いるようなものは学部の頃の方が多かったですね。

「韻が踏めなくてやり返せないから、コンピュータを使ってやろう」

― 最近だと、どんなことにプログラミングを使いましたか?

眞鍋さん:

コンピュータを使ったインタラクティブな体験のある作品を作っています。

眞鍋さんの作品集はこちら

例えば最近の作品は「韻を踏む」というもので、文字通り床に出てきた言葉を「踏む」ことで誰でもラッパーのように韻を踏めます。これは言語処理を専門にしている友人と、グラフィックが得意な友人と一緒に作りました。

― どんな仕組みになっているんですか?

眞鍋さん:

マットの下にスイッチが入っていて、Arduinoという小型のコンピュータで踏んだ場所を検出して、Unityというソフトウェアでどのフレーズが選ばれたらどれを出す、みたいな処理をやって、プロジェクタで投影しています。スイッチだと壊れやすいので、最近の展示ではKinectという距離がわかるセンサを使うなどの工夫もしています。

― 最初のモチベーションはどんなところにあったんですか?

眞鍋さん:

LINEで、いつも返信で韻を踏む友達がいて(笑)。でも私は韻が踏めなくてやり返せないから、コンピュータを使ってやろうと(笑)。それが最初のモチベーションでした。

データは青空文庫という、フリーの文学サイトから取っています。韻は3万セットくらい。実際の作品が出てくるので、「この人こんな本書いてるんだ」「こんなフレーズあるんだ、あとで読んでみよう」という反応もありました。

― 小説が好きなんですか?

眞鍋さん:

本は元々すごく好きでした。例えば、東京大学制作展に出展した「かんじんなことは、」という作品のタイトルは、星の王子さまの一節から取っています。これは植物がゆらゆら動いていているけど、見ると止まるという作品です。カメラで視線を検出しています。

― おもしろい。文章で伝えるよりも、技術を通して実感が湧く気がします。

眞鍋さん:

あと、色んな人に見てもらえます。文章に興味がない人でも、体験だと受け取ってもらいやすいですね。大人も子どもも。面白そうだからやってみるか、となる。

― 他にも言葉に関する作品が多いですが、意識しているんですか?

眞鍋さん:

自分はアート・デザイン・テクノロジーどの分野においてもプロフェッショナルではないので、活動の枠を狭めたくはないと思っています。ただ、作風を決めたほうがよいと言われることも多く、最近では言葉を使った作品を多く作っています。

最近個展をやったのですが、そのときのテーマも「ことばにさわる」。

「孤独が溶ける」という作品は「孤独」という文字が水に溶ける作品です。知らない人が参加して文字を溶かして、それが流れて消えていきます。コロナ禍もあったので、孤独を溶かすところに癒やされる、みたいな反応もありました。

― 確かに癒やされるかも(笑)。これも裏側でプログラムが動いているんですか?

眞鍋さん:

Arduinoにポンプが付いていて、水滴を制御していますね。私の作品で、プログラミングが使われていないものは無いと思います(笑)。

私はエンジニアリングがゴリゴリできるわけでもないし、ちゃんと美術を学んでいる芸術家やデザイナーのようなプロでもないんですよね。でも、プログラミングを使って、そういうプロの人達とは別の良さを出すことができる。インタラクションが人にもたらすエンタメ性を、楽しみながら考えさせるようにするために、プログラミングを使っています。

― プロとは違うかもしれないけど、プログラミングが使えることで、自分の表現の幅が広がっている実感はありますか?

眞鍋さん:

間違いなくあります。思いついた時に、プロトタイピングする(まず作ってみる)ことで見て分かってもらえる、というのがあります。「韻を踏む」の場合も、プロトタイプがあるから協力してもらえました。

何ができて何ができないのか、どんなセンサを使って何を取れば良いのかが分かるのも大きいです。自分の言いたいこととどう組み合わせればよいか、技術的な話を自分が分かっているというのは大事だなと思います。

「子どもにはアイディアがたくさんある。プログラミングを覚えると、それを形にできる」

― 眞鍋さんは、小さい頃からプログラミングをやっていたんですか?

眞鍋さん:

ちゃんとやり始めたのは、実は大学生からなんです。情報の授業が最初でした。
電子工作的なことは、小学校1〜2年くらいからやっていました。最初は子供向けのロボットキットみたいなのをはんだ付けするところから始まって。

5年生くらいの時に、祖母が足を悪くして、杖を使い始めたんです。それで、ついた時にライトが光るような杖を作ってあげたいと思って、科学技術館にものづくりができる教室があったので、そこで作らせてもらいました。当時はプログラミングは全然知らなくて、秋葉原で買った電子部品を自分で組んでいました。

実験ノート。「今見ると恥ずかしいです。笑」

― 手取り足取り教えてもらえたんですか?

眞鍋さん:

いや、全然(笑)。当時はネットとかもそんなに流行ってなかったので、おじいちゃん先生が紙を印刷してヒントをくれて、それを見て回路を組む、みたいなのを繰り返していました。電子回路の基本みたいな本も見ながら。でも結局うまく行かなくて他のテーマをやったり。

今考えると、プログラミング無しでどうやってそれを実現させようとしてたんだろうって先生に聞いてみたい(笑)。試行錯誤を繰り返す中で、研究って大変なんだなというのを小学生にして経験できました。でも大学に入ってみると、教えてくれる人がいっぱいいるし、むしろ小学生の頃より全然辛くなくない?って(笑)。

両親は文系だったので、親から習った記憶はあまりありませんでした。大学に入ってさらに世界が広がりましたね。みんな教えてくれるし。

― 中高の頃は、友達でやっている人はいなかったんですか?

眞鍋さん:

女子校だったし、中高のころはいませんでした。大学では機械系の学部に進学して、2年生の頃に「キカイxアート」という大学の企画で先輩に教えてもらって、初めてArduinoを触りました。その先輩がいなければ今の私はないですね。

― でも、小さい頃から電子工作やっていたのはすごいですね。むしろ、もっと早くやっておけば良かったと思うことはありますか?

眞鍋さん:

プログラミングですね(笑)。小学校の頃、アナログ回路だけで5年くらいやってたものも、プログラミングを知っていたら1年くらいでできたんじゃないかと思います。圧倒的に早くできたなと思います。

子供のときは作りたいアイディアはたくさんあるけど、それを形にする能力がなかった。プログラミングを覚えると形にする能力ができる気がするので、早ければ早いほど人生が楽しくなると思います。でも、いつ覚えても遅すぎることはないと思います。

科学未来館にて。「懐かしい。最近は研究で行ったりもするので感慨深いです。」

「みんながプログラミングできるようになる時代が来る」

― プログラミングが必修化されて、プログラミングをやらなきゃと思っている人は多いと思います。そういう人にメッセージはありますか?

眞鍋さん:

みんながプログラミングできるようになる時代が来ると思います。そうなったら、今度はプログラミングを使って何を作るのか、何をするのかが重要になってくると思います。

女子校にいた頃は、周りに電子工作ができる人が少なかったので、それが自分の強みだと思っていました。でも大学に入ったらみんなできた。私の場合はそこから、自分の好きな本とか社会問題とかと組み合わせることで、他の人と違う強みになればと思いながら活動しています。

プログラミングを学ぶのはもちろん役に立ちます。そしてこれからの子どもたちは、プログラミングと組み合わせる何かを持っていることが大事になるんじゃないでしょうか。

― 眞鍋さんで言えば、「プログラミング x 何」と言えば良いでしょうか?

眞鍋さん:

「伝える」ことかな。物語を作ったり社会問題について考えたりするのが好きで、それをプログラミングで、誰にでも楽しく、わかりやすいかたちで伝えるというのを意識しています。

女の子にも男の子にも、自分の作りたいものを実現する手段として、ぜひプログラミングを学んでほしいですね。今はインターネットが発達しているので、無料でたくさん情報も手に入るし、ネットショップで手軽にキットなどを買うこともできます。家族や周りに詳しい人がいなくても、学べる環境がすぐ手に入ります。

好きなことにどんどんチャレンジしてほしいですね。


眞鍋美祈(まなべ・みのり)
東京大学大学院学際情報学府学際情報学専攻先端表現情報学コース、稲見・檜山・瓜生研究室(2021年3月時点)。

エンジニア・アーティスト・デザイナーとして活動、ANA WonderFLY Creative Award(2018)、SICF20 ワコールスタディホール京都奨励賞(2019)、新世代賞特別賞(2019)、異能vationジェネレーションアワード(2019)など数々の賞を受賞。2020年にはワコールスタディホール京都で個展「ことばにさわる ー言葉が身体に還るとき、見えてくるもの。」を開くなど、学問の垣根を飛び越えて活動中。